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2017/3/15(水)2017年のビリー・ジョエル

streetlife serenade

今夜の一枚
Streetlife Serenade/Billy Joel
Billy Joel(vo,p,key,synth), Al Hertzberg/Art Munson/Don Evans/Gary Dalton/Mike Deasy/Michael Stewart/Richard Bennett/Roj Rathor(g),William Smith(org),Tom Whitehorse(pedal steel g,banjo), Emory Gordy/Larry Knechtel/Wilton Felder(b),Ron Tutt(ds),Joe Clayton(congas)
1974発表 Columbia Records

デヴィッド・ボウイ、プリンス、そしてジョージ・マイケル。昨年は、僕がアメリカン・トップ40に熱中していた33~34年前頃にヒット・チャートを賑わせていた人達が相次いで鬼籍に入った年だった。そうなるとあのビリー・ジョエルだって永遠に生きる訳ではないから訃報を耳にする日もいつかやって来る。たまには過去に好きだった音楽としてビリー・ジョエルを採り上げてみようかと思う。

僕の少年期の音楽体験はまず日本の歌謡曲から始まり、程なくしてアメリカのヒット・チャートものに移ったのだが、初めて大きな衝撃を受けたアーティストがビリー・ジョエルだった。たまたまラジオから流れてきた彼の曲を聴き、当時最新アルバムだった"The Innocent Man"までのバック・カタログは全部カセット(!)で集めた。そこからどんどんとマニアックな方向に趣味が進んでいったのである。

でも今日「ビリー・ジョエルが好きだ(った)」と書くのは僕にとって若干の恥ずかしさを伴う。それは多分、ビリー・ジョエルという人が富と名声に溺れてしまって堕落していった人であり、そこに今の僕の価値感から見れば嫌悪感を覚えるからである。自分が好きだったアーティストに対してそういう気持ちを持つ事の方が実は恥ずかしい事だと思うが、そういう気持ちが少しあるのは否めない。

今改めて彼の映像をYoutubeで観ていると、ミュージシャンとして、そしてエンターテナーとして有名にならない方がおかしい位の才能を彼が持ちあわせていた事は再確認出来る。こんな動画↓は良い例だろう。実際にスターになってからも良い曲を書いていたなぁと感心する。



ただ、作詞家としての彼はダウンタウンの人々の生活を歌う一庶民であったから、セレブになった事によって歌うべきものが変わってしまった。

例えば有名曲"Piano Man"。1973年に小ヒットを記録した曲だが、彼が大ブレイクする前の曲だ。当時ピアノ・バーで演奏活動をしていたビリー。土曜の午後9時には常連客達が店に入ってくる。それぞれが現在の生活に疑問や悩みを抱え、それを語り合い、ビリーの歌で束の間それを忘れる為にやってくる。その歌詞の内容は30年前から文面では知っていたが、それがどういう事なのかはさすがに当時ローティーンの少年だった僕に解るはずも無く、解雇されたり夢を諦めたりいろいろ経験した今聴いてみると改めてこういう事かと解ったりする。一方、大ブレイクした後のアルバム"52nd Street"の一曲目"Big Shot"の歌詞でアップタウンのパーティー会場にリムジンで乗りつけ、ドン・ペリニョンを飲み過ぎて失態を犯してしまう主人公は二人称"you"で歌われているが、恐らく彼自身か近しい友人の事だろうと思えば、歌の内容の変化は一目瞭然である。皮肉にもあり余る才能が彼のやるべき表現を奪ってしまったという悲惨な面も感じるのである。

僕的にはビリーのアルバムとしての最高傑作は彼をスターダムにのし上げた大ヒット作"The Stranger"でありそれは昔も今も変わらないが、それに続くアルバムを選ぶとすれば、売れない時代に作った1974年のこの"Streetlife Serenade"かその次の"Turnstiles"かなと思ったりする。

この"Streetlife Serenade"はビリーに熱中していた当時から特にお気に入りのアルバムであったが、1970年代のアメリカを端的に表した絵画のジャケが今見ても良い。"Piano Man"が小ヒットになりつつも燻ぶっていた頃で、彼は当時活動拠点にしていた西海岸から故郷NYに戻ってくるが、街を出ていく心境を描いた"The Great Suburban Showdown"は僕にとって思い出深い一曲である。あとは彼のベスト・ソングだと思っている"Movin' Out"への伏線とも言える歌詞の"Weekend Song"とか、この辺の曲はライヴ演奏記録もほとんど残っていないほど忘れ去られた曲達であるが、こういう曲こそ僕のイメージするビリー・ジョエルだったりするのである。



さて、実は今ビリー・ジョエルの事を書いてみようと思ったのにはもう一つ理由がある。彼のファンならお解りになると思うが、そう、この"Streetlife Serenade"の次のアルバム"Turnstiles"のラストに"Miami 2017"という曲が収録されている。彼が大スターになった今もライヴではハイライトになっている一曲だが、このアルバムが制作された当時ビリーが、当時から約40年後に当たる2017年のアメリカの様子をNYの街を中心に空想で歌った未来ソングである。僕がビリーを聴いていた頃から考えても遠い未来だった2017年が今現実にやって来た。

この40年の間にNYの街に起こった最大の出来事はあの2001年のテロ事件だと思うが、彼はこの事件を端的に予言していた。ワールド・トレード・センターの事は歌っていないが、同じ高層ビルであるエンパイア・ステート(・ビル)が倒れるのを見たと当時歌詞に書いている。この事は当時も話題になり彼もコメントを残している。そんな偶然もあったが、総じて見ると、例えばマフィアがメキシコを支配したりブロードウェイの灯りが消えたりと、彼が当時空想したような大きな変化は起きていない。近未来とは我々が思い描くように極端には変わらないものだなとふと思った次第である。



今夜はバナーは無し、ね

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コメント

No title

若かりし頃の作品は 荒削りな部分があってもデビューに向けてミュージシャンの根元が出てる気がします。
フリートウッドマックのように 途中で方向性が変わってから人気出る人もいますが

基本デビューアルバムと2作目、3作目あたりで完成する?
そこから以降に活躍できるのは 本当の才能でしょうね。

Re: No title

>グレペンさん お久しぶりです。

"The Stranger"までのBilly Joelを聴くと、この人は本当に才能のある人だなという気がします。それ以降も凄いのですが、いかんせんセレブになって歌が変わってしまったw。

名曲"Movin' Out"で幕を開けるアルバム"The Stranger"は売れるべくして売れた傑作である気がしています。

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