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12/20(火)雪と雨

今夜の一曲

先日の柏崎~出雲崎への旅行の折、行きの上越新幹線の中で腰を据えて読み始めた村上春樹氏の「海辺のカフカ」がだんだん面白い展開に突入してきた。東京から離れる列車の中で家出少年の話を読むというのはなかなか旅の気分を盛り上げるものであった。

タイトルになっている「海辺のカフカ」とは、物語に登場する50過ぎの女性・佐伯さんが10代の時に作曲して大ヒットした曲のタイトルだ。シュールな歌詞が乗ったメランコリックな曲。

物語の設定では、「海辺のカフカ」のリフレインには不思議なコードが2つ登場する事になっている。他のコードはありきたりだが、その2つがいやに意外で斬新であり、それが一瞬混乱を招くと書かれている。

僕は今、この「海辺のカフカ」をNino Katamadze & Insightの"Rain"になぞらえている。この旅の中でヘッドフォンで聴いていた曲。アルバム"Blue"のクローザーのスロー・ナンバーで、最近僕の注目度急上昇な曲だ。

アルバム"Blue"では一貫してオーケストラが効果的に使われており、それはこの曲"Rain"でも然りである。オーケストラがフォルティッシモで盛り上がり、ブレイクの後の静寂の後で、まるで水面に一滴の水が波紋を打つようにピアノのコードが1発鳴らされる。ここでは2つではなく1つのコードだ。そして、僕はコードの事はほとんど解らないが、聴いた感じ、ごくありきたりのコードだ(解る方、教えて下さい)。ただ、このオーケストラの盛り上がりとこの波紋のようなコードの対比。

世の中には、才能のある人しか作れないものがある。ここでのこのコードは僕にとってまさにそれである。ゾクっとくる。多分「海辺のカフカ」の2つのコードはこんな感じではないかと思っている。

僕にとって、この"Rain"は雪の曲である。タイトルが"Rain"だから、グルジアでは雨はこういう風に降るのかも知れないけれど、日本の気候の中では、これは雨ではなく雪の降り方をイメージさせる音である。

この旅で僕は密かに雪の日本海を期待していた。雪がしんしんと降る、演歌に登場するような冬の日本海。そんな場面でこの"Rain"を聴いたらどんな音風景が作られるのであろう…?しかし、期待を裏切り、この日の日本海は東京を上回るのではないかという暖かさであった。

多分、旅というものは予め「計画」してはダメなのだ。いや、それは旅以外のあらゆる事に言えるかも知れないけれど、後々の思い出にしようとして計画した事というのは案外印象に残らない。偶然起こった期待外れの事というのが実は思い出に残ったりする。

この旅の途中、印象的なハプニングがあった。出雲崎の駅から釣りに行こうと海に向けて歩いた道。地図で見た感じでは10分ぐらいの道のりかと高を括っていたが、実は1時間弱かかった。途中でバスを探したほどだ。でも海へ行くバスは見当たらなかったので、いつ着くか解らない道のりを歩いた。

結局1匹も魚が釣れないまま日は暮れたが、実は野宿して一晩釣りに興じようとも考えていた。野宿出来ないような気温ではなかったし、何よりも元来たあの長い道のりを真っ暗闇の中で歩く事を思うとゾッとしたからだ。肝試しの舞台にもなりそうな、ろくに灯りも無い道を1時間弱歩く事を想像してみて欲しい。

結局僕はその道を暗闇の中引き返す事を選んだ。でも不思議なもので、その道のりはこの旅の中で最も印象に残る風景となった。

空には無数の星が瞬いていた。予想に反して街灯が明るかったので、最高の星空とはいかなかったのは残念であったが、夜空を見上げながら歩いたその1時間弱は最高の時間であった。

ずっと星空を見上げながら例の"Forgotten Melody"、そしてこの"Rain"を夢中で聴いた。

この"Rain"もある解釈に於いては星空の曲でもあるようだ。1時間弱も星空を眺めていると、空想的な事をいろいろと考える。

人は死ぬと星になると言う。でも人間が地球に誕生してから一体何億、何兆(それ以上)の人間が亡くなったのだろう?星はそんな数存在するのだろうか?いや、本当に存在するのかも知れない。己や他人の死の事を思い星空を眺めていると、時に星はその人の心にまるで雨のように降ってくる。この降り方は僕のイメージでは雪ではなく雨だ。これはきっと有史以来ずっと繰り返されてきた事だ。

…やっぱり"Rain"はある解釈に於いては雨の歌だと思った。




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